phaの日記

パーティーは終わった

承前:旅下手小説



 という旅行下手ということで、ものすごく楽しめたのが太宰治の「佐渡」という小説だった。(新潮文庫『きりぎりす』所収。青空文庫でも読めます)。すごくくだらない短編なんだけど。
 主人公(太宰(ということにしておく。フィクションかもしれないけれど))はずっと昔から佐渡島というところはものすごく寂しいところらしいと聞いて気になっていて、是非一度は行ってみたいものだ、と思っていました。そうしてついに念願叶って船に乗って佐渡に行くわけです。一人で。
 それで佐渡に着いたはいいんだけど、そこは本当に寂しいところでただの田舎で、旅行に来る者なんてほとんどいなくて旅行者を相手にしてくれる人もいなくて、太宰みたいな旅行者を「こいつは何をしにこんな何もないところに来てるんだ? 田舎者を馬鹿にしに来たのか? ここはお前のいるところじゃないよ」とあざ笑うかのごとく(被害妄想)人々は地味に地に足の付いた生活をしているだけで、もちろん町には遊ぶところなどほとんどなく、宿屋も料理屋も芸者も田舎臭くてひどいもので、すっかりうんざりした太宰が「ああ、俺は何故わざわざ好きこのんでこんな佐渡くんだりまで来てしまっているんだろう。お金にも余裕がないのに。俺は何をやっているんだ。俺はなんて馬鹿なんだ。」と酷く自己嫌悪する、っていうだけのくだらない小説なんだけど、これを読んで俺は太宰にすごく思い入れができました。太宰面白いよ。」