phaの日記

パーティーは終わった

短歌三十首



全自動で折り畳まれた恋人の上に乗っかかったままで日曜
着替えればいいだけなんだ着替えればあとは背骨がやってくれるから
豆乳と野菜ジュースとバーボンで暮らしていれば水だと思う
薄切りの食パンひとつ抜きとって立方体をやや平たくする
あの日から十年経って錠剤を持ち歩く人になってしまった
UNIQLOの紙袋を両手に持てば走る子供が顔からぶつかる
EVIANのペットボトルに擬装した泡盛を犬の鼻にちかづける
もう雰囲気が消えてしまった揮発しやすい人なのだろう
バス停でぴょんと目が合った学生も誰かのことを好きなのだろう
キスをするために外した縁無しの俺の視力が猫を見ている
その昔キリンの首をへし折った極悪非道の神の左手
二十回生まれ変わるならそのうちの一回は海の匂いが似合う・・・・・・
うつむくとこの特急は前へ前へと走っていることしかわからない
からまった材木とかが螺旋状に融けていくまでひねりをかける
つくえ、かたい、顔をうずめたところから殺人事件までを夢に見る
電線がどこまでいっても続いてて特急のシートで泣いてしまう
「二輪車は二輪」「三輪車は三輪」口ずさみつつ人を殴りぬ
「電磁波は体を通り抜ける」とか考えていれば夜は短い
すっぱだかでジェットコースターに乗り込んで叫んだ願いは叶うらしいよ
青と白のスミレの前に膝をつき昼のうどんをそっと捧げる
僕はそのうち王様王様王様になるから君はセンター試験を受けろ
「そんなにもおねがいするほどさわりたいの?」「おねがいするほどさわりたいです」
スカートのもようが複雑すぎたとかそういった問題かもしれない
くろーるの最後の"る"を手わたすとあの子はいつもるっこらという
てをつなぎ草のベッドで目をとじる/とがめるように蟻がくびをはう
煙草屋の角を曲がって少し行くとファミリーマートが突然にある
巻き舌が震える午前 風が少し強くなった午後、自転車を買う
東京に持っていく物を書き上げたファミリーマートのレシートがない
天上から舞い落ちてきた絵葉書を右脳左脳のあいだに挟む
あざやかに覚醒しつつある頭部を揺らさぬように河原へ運ぶ


マタドールになりたがってたKくんは本当にマタドールになった
カメラマンになりたがってたOさんも本当にカメラマンになった


すっぱだかでジェットコースターに乗り込んで叫んだ願いは叶うらしいよ
もし君が銃を持ったならたぶんロクなことをしないだろうから」射殺

なんでこの人(俺?)はいつもいつも寝不足なんだろういつもいつも

親指を紺の手帳に挟まれて線路の前で動けない姉


叩きつける。朝、蹴つまずく前に。コンクリートが乾いてる朝。
背骨の芯、血球のひとつひとつまで悪いみどりに染まっていたよ
あの人はハッカタバコを忘れていった僕は眠っていればいいのだ
暖色のぬいぐるみ売り場をゆくときはジャスト・ライク・ア・サムライソード
二の腕は噛みとるのによさそうだけど 口を閉じ、おとなしく、キスした
同居人とその恋人が眠っている横で静かに履歴書を書く

左眼の奥で五歳児が泣いているような不眠が月に一度ある
震災の夕べ深山幽谷で手を打ちあって踊る三匹
春の陽に緑黄色野菜縫いこめられ 浮遊 ハンカチーフ 高くて
二十回生まれ変わるならそのうちの十五回君のおっぱいを吸う

そりゃあまあ当然のごとくにそうなんだけどそれでも納得いかないよ俺は
何故そんな眼を向けるんだ?俺はただ氷を口に入れたいだけさ

しゃがみこむ ありとあらゆる電柱はただ一点で交わるはずだ

あの女が京都駅前で泣くようなたくらみを抱きガムを歯で練る
七色のマーブルチョコを噛み砕き阪神帽の男に近づく
俺たちも無人島に漂着したら殺し合ったりするんだろうな
「ホエザルはある一ヶ所に集まってみんな揃って排泄をします」
キムチからピクルスまでの漬け物を食えぬ男がまばたきをした
つくえ、かたい、顔をうずめたところから殺人事件までを夢に見る
あのひとはすごいすごいと言いながら蜂のダンスが気になっている

そういえば二月六日も12分55秒のところで果てり
五寸釘を体のなかに打ちこめばKくんみたいに生きられるかも
フラッシュバック・洗濯機の渦・星月夜・眠れずに道でくらくらとする