phaの日記

パーティーは終わった

というか[蘊蓄]、ファセット分類法(もしくは分析合成型分類法) つづき



 二つ下の文では大雑把にしか説明しなかったのでここではもう少し詳しく書きます。



 2003/02/24 17:00 加筆しました。

 図書の分類法には大きく分けて列挙型分類法と分析合成型分類法がある。一般の図書館で用いられている十進分類法などは列挙型分類法、ここで話題に出しているファセット分類法は分析合成型分類法である。
 列挙型は図書を分類する前にカテゴリを作っておく。NDC(日本十進分類法)では歌舞伎は「774」とか。大体カテゴリーはツリー状に組織することになる。
 列挙型の利点。図書に与えられるカテゴリが既定の型のうちのどれか一つなので、本棚に配置できる(分析合成型ではそれができない。後述)。歌舞伎に関する本は774という記号を割り振られ、774の棚に置けばよい。あと、ツリー状なので全体的な構成を直感的に把握しやすい。
 列挙型の欠点。利点の裏返しだが図書にカテゴリを一つしか適用できない。よって複雑なテーマに対応できない。「量子力学で歌舞伎がわかる」とかいう本があったとしたら、その本は量子力学の属性も歌舞伎の属性も持っているのだけれど、どちらか一方の棚に分類せざるを得ない(この場合は規則により歌舞伎に分類する)。
 欠点をもう一つ。隣接する主題の資料がバラバラに配置されることがある。例えば「色彩」に関する本が、それを取り扱う視点によって、「光学」「心理学」「生物学」「芸術」などの分野に分散してしまう(これを補うために関連する分野を参照するための表があることはあるが、いちいちそれを見るのも面倒)。
 分析合成型は、予め分類の枠を作っておくことをしない。割り振る分類記号は、その資料のテーマを分析して、合成して作る。具体的には、資料のテーマについてその「扱う事物」「物質や素材」「過程や動作」「空間や場所」「時間や年代」という属性を抽出し、それを組み合わせて分類記号を作る。1980年にイギリスで書かれた歌舞伎を量子力学の観点から分析する本の分類記号は、「歌舞伎」「量子力学」「イギリス」「1980年代」といったそれぞれの概念に対応する記号を並べたものになる。243;32:43.54とかいう風に(←値は適当です)。これでこの本は「量子力学」からも「歌舞伎」からも検索できる。
 この時に使う「事物」「時代」「場所」などの属性を、ファセットという。
 分析合成型の長所は既に述べたように複雑なテーマに対応できること。それによって検索性が上がること。
 短所は、リアルに棚に排架する基準として使えないこと。あと、分類記号が長ったらしくてすっきりしないこと、がある。

 分析合成型分類法とファセット分類法という言葉の違いについて述べておくと、分析合成型分類法の代表的なものとしてファセット分類法がある。そしてファセット分類法の代表的なものとしてインド人のランガナタンさんが考えたコロン分類法がある。
 しかし、ファセット分類法以外の分析合成型分類法ってのはほとんど聞かないし、コロン分類法以外のファセット分類法もほとんど聞かない。よって分析合成型分類法≒ファセット分類法≒コロン分類法と言ってしまってもいいような現状だ。
 そもそもこの分類法は理論的には高く評価されているけれども、実践的にはほとんど使われていないのです。理論的な成果が他の分類法に影響を与えたという点で重要なのですけれど。現在では列挙型分類法においても、列挙型の欠点を補うために分析合成型分類法のエッセンスは取り入れられています。
 
 などと自分の勉強したての知識を定着させるためにも書いてみた。そんなに図書館情報学に詳しいわけでもないので間違っている点はあるやもしれず。もっと専門家がいればよいのだけど。


 で、はてなダイアリーのキーワードは別に物理的にキーワードを並べるわけじゃないから、そんなにツリー状にするメリットもないかな、と。


 個人的には「ミュージシャン」とか「人名」とかいう誰でも意味を知っている普通名詞が、その子キーワードを配置するためだけに、ほとんど無意味な説明とともにキーワード化されているのがどうにも落ち着かないです。