phaの日記

なんとかなりますように

脇川飛鳥さんの歌集『ラストイヤー』(短歌研究社)の帯にコメントを書きました


帯はこんな感じです。

phaさん
「平易なようでときどき、どうにでもなれ、というような勢いのよさが発生するのがすごい魅力の作風」 (2024/6/15X)


枡野浩一さん
「ずっと大ファンです。」


コメントを書いたというか、ツイートが使用されたという感じですね。まさか載るとは思わなかった。
自主制作のときから好きな歌集だったので、うれしいです。



以下、好きな歌の感想です。

信号が青になっても気づかずにこんなところで決心をした

他人から見ると、ごくありふれた風景の中での、ありふれた決心なのだろうけれど、それが自分にとってはとても重大なことだ、という、平凡さと特別さが同時に存在する瞬間の感じが、「こんなところで」というフレーズにこめられているような気がしました。

人間は別れて生きていくのです それではルールを説明します

淡々とした口調が怖い。でも、人生はそういうものだから、そのルールに従わなくてはいけない、ということもひしひしと伝わってくる。

ふたりでただビールを飲んで脳みそがあったかかったあれはよかった

最後の「あれはよかった」がいい。簡単なようで、なかなかここで「あれはよかった」は出てこないな、と思う。風景とか、もっと他の要素をつけてしまいがち。

ひとりぶんのホットケーキがやたらうまく焼けてしまってぶち壊したい

「ぶち壊したい」が勢いがあっていいですね。わかる。

一回だけ折り目がついて伸ばしてももう戻らないたいしたもんだ

「たいしたもんだ」と、精一杯平然を装ってる感じがいいですね。

全体として、一見平易で呑気そうな言葉遣いなのだけど、諦めや喪失のムードが漂っているのがとても好きです。