phaの日記

なんとかなりますように

穂村弘さんの『短歌の話は長くなる』という対談集に登場しています


もともとは『NHK短歌』の雑誌の、主に歌人じゃない人と短歌の話をする連載をまとめた本です。
穂村さんとはこの1、2年で4回くらい対談などをしています。僕が短歌を始めたのはもともと25年前に穂村さんの『シンジケート』を読んだからなので、その穂村さんとこんなに話す日が来るとは胸が熱いです。当時の自分に教えてあげたい。


pha.hateblo.jp


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「キバ」「キバ」とふたり八重歯をむき出せば花降りかかる髪に背中に  穂村弘


日本人にはSNSより日記かも

3月18日に、『書きたいことがない人のための日記入門』という本を星海社新書から刊行しました。新書は今まで出したことがなくて、新書好きなのでうれしいです。

日記って、もっとも身近で手軽な創作だと思うんですよね。書きたいことはないけど何かを書いてみたい、という人に読んでほしい一冊です。
僕はそもそも、別に書きたいことはないけど何かを書きたい、という感じで20年以上前にウェブ日記(はてなダイアリー)を始めたんですが、そこから今に至るまで、自分の活動の根底には一貫して日記的なものがあるな、と思っています。文章と書き手個人が密接に繋がっていて、大げさに自分を飾らずそのまま等身大の自分を出す感じ、というか。
そんな話をしている本です。書くことに興味がある人はぜひチェックしてみてください。


また、それと同時期に出た、蟹の親子さんの『日記をつけて何になる?』という本に推薦コメントを書いています。

“なぜ人は日記をつけるのだろう、何かの役に立つわけでもないのに。日記ワールドで迷子にならないためのガイドブック。”――phaさん(作家)

“蟹の親子さんがいなかったら、日記屋 月日がいまも続けられていたか、私にはわからない。専門店の中心を担ったひとりの、6年分の日記論。”――内沼晋太郎さん(日記屋 月日代表取締役)

蟹の親子さんは下北沢にある日記屋月日という日記専門店にずっと関わっている人なんですよね。僕の本とはまた違う角度から、日記を書く人にしっかりと寄り添う本になっていて、こちらも読んでみてほしいです。


こんなふうに同時期に二冊の日記関連本が出る背景としては、ここ何年かしばらく日記ブームと言われているのがあります。主に文学フリマやZINE界隈でなのですが。
本が売れないと言われる一方で、自分で何かを書きたいという人は増えています。こんなにも誰もが文章を書くようになったのは、ネットの普及が大きいでしょう。毎日毎日SNSやLINEで、みんな無数の文章を書き綴っている。それはある種の日記のようなものだと思います。そしてネットで文章を書き始めた人が、自分の文章をちゃんとした形でまとめてみたいと思ったときに紙の本が選ばれる、というアナログ回帰の現象が起きています。
SNSのタイムラインは流れが速すぎて、過剰な感情を煽るものになっている。あそこはしっかりした文章を書く場所じゃない。周りの空気に流されずにじっくりと何かを考えたり思考を熟成させたりするには、日記を書くというのがひとつの方法ではないかと思っています。


はるか昔に、当時流行り始めていたブログブームに対抗して「日本人にはBlogより日記」と言い放ったのははてなダイアリーを運営する株式会社はてなの近藤淳也社長でしたが、

japan.cnet.com

そのはてなダイアリーも時代の流れには逆らえず、はてなブログに移行して消えてしまいました。
しかし、いま再び日記の時代が来ています。もう一度はてなブログをはてなダイアリーに戻すのもありなのではないでしょうか。実は「日本人にはSNSより日記」なのかもしれません。

はてな匿名ダイアリーはいまだに「ブログ」ではなく「ダイアリー」ですよね。「ダイアリー」だから、正しいかどうかわからない個人のモヤモヤした情念を書き綴る場所としてふさわしい雰囲気がある。正しいことや正確なことはAIがいくらでも書いてくれる今の時代、人間が書くべきなのは情念くらいしかないと思うんですよね。


追記:
「日本人には」という部分を少し補足します。
そもそも日本には平安時代くらいから『土佐日記』『蜻蛉日記』などの日記文学の歴史がありますし、近代になってからも作家たちは日記をつけてきました。それは日記が日本人の精神性に合っているからなんだと思うんですよね。

また、以下のような調査もあります。

levtech.jp

2003年の調査ですが、日本、韓国、フィンランドのウェブ利用法を調べたところ、日本は日記を書いている人が圧倒的に多かったらしいんですよね。
日本人はコミュニケーションにおいてそれほど積極的じゃないので、日記を書いてウェブに公開して、それを読まれるのを待つ、という受動的なやり方が向いているのだと思います。

『あらゆる悩みは東洋思想で解決するかも』という本が出ます

齋藤孝先生との対談本です。



中年になると、これからは体もどんどん衰弱していくばかりで、どうやって生きていけばいいんだろう、と不安な気持ちになるんですが、そんなときに効くのは東洋思想なのかもしれません。成長を目指すのではなく、衰退や虚無に向かい合うのがブッダや老子の教えなのではないでしょうか。

ということで、今回は東洋思想に造形の深い齋藤孝先生に教えを請うことにしました。齋藤先生の本は『身体意識を取り戻す』『呼吸入門』『三色ボールペン情報活用術』など、昔から読んで影響を受けていたので感慨深いです。
齋藤先生は『SLAMDUNK』や『SPY×FAMILY』の本を出しているくらいマンガをめちゃめちゃ読んでいる人なので、対談の中でも赤木しげるとかいろんなマンガが例に出てきます。
なんか成長を目指すのに疲れたなーという方はよかったら読んでみてください。

『毎日酒を飲みながらゲーム実況してたら膵臓が爆発して何度も死にかけた話』のたろちんさんと対談しました

ohtabookstand.com

『毎日酒を飲みながらゲーム実況してたら膵臓が爆発して何度も死にかけた話』はタイトル通りの話なのですが、とても面白かったです。自分の身に起こった事態をなんだか外側から実況しているような感じがあって、なので深刻な話なのに笑いながら読めてしまう。文章が上手くてグイグイ読まされてしまう。ネット的な文体ではあるんだけど、本として読んでも違和感のない感じですね。
面白く読んだあとで、人生について考えさせられてしまいますね。膵臓が爆発してもうお酒を飲めなくなってしまったたろちんさんだけど、「あの頃お酒を飲んでいたのは自分に必要だった」というようなことを言っていて、そういうことってあるよな、と思います。僕も、あの頃はああしかできなかったんだよな、ということがいくつもありますね。
パーティーが終わったあとにどう生きていくか、考え続けないといけないな……。

2024・2025年に発表した短歌まとめ

最近はあまり作ってないんですが、ここ数年で発表した短歌がいくつかあるので、散逸しないようにまとめておきます。

2024年

『ねむらない樹 vol.11 』


  春休み 


珍しく午前に起きて噛み切ったベーグルが恐竜に似るまで

腰や腰以外の部所をかばいつつ駅前で聴く吹奏楽部

いつまでも覚えられない祝日がいつの間にかなくなっていた

それ以外名前を知らないかのように桜の木だと何度でも言う

お通しの茄子が美味しい居酒屋は浄土みたいな提灯だらけ

クーポンはあしたの24時まででコブサラダのコブって何だっけ

春休みみたいな名前の由来をお湯がわいたら訊ねてみよう




『短歌研究 2024年 5+6月号』


  伸びていく


誰も見ていないときにはゆっくりと落ちる椿の花 繰り返す

駅前で俯いている男性が摂取していた液体と串

蛇のように水のホースが跳ねまわる夏にあなたがぐんぐん伸びる

人間が食べやすいよう長くした小麦を麺という──着丼

腰を下ろして中身を出してなんだっけ、ああそうだ、流すんだ全てを




『胎動短歌 Collective vol.5』


  なめらかさ 


曲がり角の向こうに蝉がいてそれが死んでいたという記憶がある

あのひともあのひとも疎遠になって 夜中に耳をなでまわす癖

向こう側にたどりついたらどうでもいい写真を撮って送るよ、道とか

少しだけ涼しい それに それだから わかってないって言われるんだろう

有料の展望台から見えるものすべてを点と線に変えても

ワックスをつける ワックスをとる 細かい砂にまみれていたい

一度溶けて凍った氷特有のなめらかさを覚えたまま生きる 

どの歌も嫌いでどの歌も良くてバッグに入るだけ詰め込んだ




2025年

『短歌研究 2025年 5+6月号』


 UNKNOWN


人生はスゴロクみたいなものだって思っていたらこうなりました

すり減っていくだけだからとりあえず注文をしなくては だめだ

戻るならどの瞬間に冬にまだ普通に生活できてた頃に

コンビニができてつぶれてそのあともいろいろあってもうわからない

犬などが近寄ってこない こんな日は月が欠けてるんだろう 眠い

大昔の子どもが空き地に集まって遊んだのは嘘かもしれないね

コンビニができてつぶれて  もうわからない


『季刊日記 創刊号』で植本一子さんと対談しました

なんだか日記がちょっとブームになっているらしく、日記だけの文芸誌というものが登場しました。いろんな人たちが日記を書いたり、日記について語ったりしています。

日記といえばこの人、という写真家の植本一子さんと対談しています。日記を書くことや、それを自分で本にして売ることについて、いろいろ語っています。日記は商業出版よりも、手作りで売るのが似合いますね。

あと、個人的に日記に関する本を書いていて、来春くらいに出る予定です。

『USO7』に「平気でうそをつけたら」というエッセイを書きました

「あなたの嘘を教えてください」というテーマで、さまざまな作家が書き下ろす文芸誌シリーズ、「USO」にエッセイを寄稿しました。

好きな雑誌なのでうれしいです。みんな適当な嘘を書いているのかと思ったら、ヒリヒリするような本当のこと(っぽいこと)ばかりが書いてあったりします。
『USO』は主催者の野口理恵さんが先陣を切って、身を切るようなことを書いているので、自分も書かなければ、という気持ちにさせられるんですよね。他では書けないこともここでは書ける、という心理的安全性がある場所だな、と思いました。『USO』に書いた文章をまとめた野口さんの本もとてもよかったです。