phaの日記

毎日寝て暮らしたい

面白かった本2022



毎年年末に書いている、今年面白かった本を紹介する恒例の記事です。
去年の11月に『人生の土台となる読書』というブックガイドの本を出したんですが、去年はその本を書くために大量の本を読みまくってたせいで、書き終わったあと、しばらく反動で「本を全然読みたくない……」という状態に陥っていました。
その時期が11月くらいまで続いていたので、ちょっと今回は少なめです。漫画はあいかわらず読んでいたので漫画を多めにしました。あと文章が読めない時期も短歌は読めたので、歌集もいくつか。そんな感じでお送りします。

漫画

縞野やえ『服を着るならこんなふうに』

ファッションに苦手意識がある主人公が、妹や友人からいろいろアドバイスをもらってファッションの面白さを知っていく漫画。最近ちょっとファッションに気をつけてみようと思っていたので、興味を持って一気に読んだ。
かなり実用的な内容で、買う服の参考になる。ユニクロがとても推されていて、「とりあえずユニクロがあれば一通りなんとかなる」という内容なのが頼もしい。
どういう内容が書かれているかというと、例えば僕は「無地のTシャツってなんか肌着みたいな感じがする」と思って避け気味だったのだけど、この漫画の主人公も同じことを思っていて、でも、漫画の中で「しっかりした生地と形の無地のTシャツはむしろ大人っぽくて万能」というのを解説してくれていて、参考になった。

『服を着るならこんなふうに』1巻より

そして、ファッション知識を得られるだけじゃなく、漫画としても楽しい。嫌なところがなくて嫌な人も出てこないけど面白い。
僕は、いろんなウンチクや雑学が盛り込まれていて勉強になる上に漫画としても面白い、という漫画が昔からすごく好きで、例えば『鉄子の旅(初代)』や『めしばな刑事タチバナ』などをずっと何度も読み返して愛読しているのだけど、『服を着るならこんなふうに』も同じ枠としてとても楽しんでいる。
11巻が「30~60代のファッション編」になっているので、僕と同じような中年男性諸氏におすすめです。この巻だけでも。GUで売ってる1500円のシェフパンツが履きやすくてよかった。

 

カレー沢薫『ひとりでしにたい』

叔母が孤独死したことをきっかけに終活について考え始める30代独身女子の話。終活についての知識をいろいろ解説してくれる部分もいいんだけど、元カレや同僚男子と対決する心理バトルのパートがすごく良くて、引き込まれてしまった。カレー沢さんはオタクっぽい話とかソシャゲの話とかいろいろなものを書いているけど、こういうのも書けるのか……と驚いて、それからずっと連載を追いかけている。

『ひとりでしにたい』4巻より

 

あちゅむち『エロティック×アナボリック』

ひたすらエロい体を作るために厳しい食事制限や筋トレなどのボディメイクをする女子と、その子をモデルにして絵を描こうとする男子の話。エロい体はたくさん出てくるけどエロい展開は全くなくて、二人ともひたすらストイックに自分の道を追求しているところがすごく好き。筋トレや食事についての雑学も多め。

『エロティック✕アナボリック』1巻より

 

入江喜和『ゆりあ先生の赤い糸』

50歳既婚女性が主人公で、夫が寝たきりになったり、夫の愛人(男)が発覚したり、自身も恋人ができたりする話なのだけど、ロマンスがメインではなく、ロマンスが他にあってもそれでもなかなか簡単に切れるものではない結婚とか夫婦とか家族という関係性とはなんなんだろう、というところが主軸の物語。ちょっと理想的すぎるところはあるかもだけど、「拡張家族」的な話が好きなので楽しんで読んだ。

『ゆりあ先生の赤い糸』1巻より

 

安島薮太『クマ撃ちの女』

北海道でハンターとしてクマを撃ち続けている女性主人公の話。狩猟についての知識も面白いし、各キャラの描き方も上手で引き込まれる。自然とのギリギリの戦いの話はいつも面白い。

『クマ撃ちの女』4巻より

 

うすくらふみ『絶滅動物物語』

リョコウバトやドードーなど、人間によって絶滅した動物の、絶滅にいたるまでのエピソードを書いた漫画。勉強になる。学習まんがとして子どもにもすすめたい感じの漫画だ。

『絶滅動物物語』より、ステラーカイギュウ

 

高橋ツトム『JUMBO MAX』

違法なEDの薬を作る、自身もEDの薬剤師が犯罪に巻き込まれていく話。高橋ツトムさんの漫画といえば『地雷震』とか『スカイハイ』とか、触れると怪我しそうなくらいに鋭い美男美女が出てくるイメージがあるけれど、今作は冴えないでっぷりとした中年男性が主人公なのがいい。主人公のおっさんが、「理解できるし同情できるところもある」というのと、「こいつヤバいし最悪だ」という二つのどちらともはっきりと決められない得体の知れないままで物語が進んでいくのがスリリング。

『JUMBO MAX』1巻より

 

香山哲『プロジェクト発酵記』

漫画の連載をする前の、連載の準備についてを、連載にしたという不思議な形式の本。
「読者を想定する」「編集者と意見交換する」「自分のリソースを考える」など、あるプロジェクトを実行するときに、アイデアをどう考えて、どう肉付けして、どういうふうに立ち上げて進行していくか、というやりかたが漫画形式で細かく書かれている。
香山さんの『ベルリンうわの空』は、よりよい生活をするためにはどういう場所がいいか、ということをベルリンでひたすら考えていた本だったけど、今回の本も同じような雰囲気があって、要は何かをするための環境整備オタクなのだ。やる気とか雰囲気とか流れとかでなんとなくやるのではなく、徹底的に前提条件を整備するのが好きな感じで、その整備っぷりが突き抜けているので楽しい。何か新しいことを始めるときに参考になる本だと思う。

『プロジェクト発酵記』「何のために実行するのか」より

エッセイ、ノンフィクションなど

山本文緒『無人島のふたり: 120日以上生きなくちゃ日記』

膵臓がんで突然余命120日と告げられた山本文緒さんが、死の直前まで書いていた日記。山本さんは昨年、58歳で亡くなっている。山本さんの小説は一冊も読んだことがないのだけど、本屋で見つけて気になって買ってしまい、読み始めると引き込まれて、面白い、と言っていいのかわからないけれど、一気に読み切ってしまった。
少しずつ衰弱していきつつも、頭脳の働きは衰えないまま、死へと一歩一歩近づいていく思考が描かれていく。
余命宣告を受けてから世間と隔絶されたように感じて、突然夫と二人で無人島に流されてしまったようだ、というのがタイトルの由来なのだけど、終盤では、「いよいよ夫は本島に戻って、私だけが無人島に残るときが来たのだ」という記述があって、なんとも言えなくなる。

この本を読んでから、「そのうち僕もこんなふうに突然死ぬのだろう」という気持ちが高まってきて、怖い。もう自分はがんになっているのかもしれない、と、一日に何度も考えてしまう。
自分もいつか死ぬんだよな。死ぬ前にやりたいことを全部やっておかないと、と思うけれど、そんなにやりたいことはもうないと言えばないんだよな。この本では、余命120日と告げられた筆者が、「生きているうちにあの本の刊行だけは見たい」と言って、大急ぎで出版をするのだけど。
58歳で亡くなるのは早いなと思う。僕は今43歳なのであと15年か……。しかし、人の介護の話などを聞いていると、80代や90代になって認知症でよくわからなくなって寝たきりで何年も生きるよりは、山本文緒さんのように頭が働いているうちに半年ぐらいの闘病で亡くなるほうがいいのかもしれないとも思ったりする。
でも、そんなのは自分で選べるものではないのだろう。与えられた状況をなんとか生きて行くしかない。とりあえず人間ドックに行こうか。


鶴見済『人間関係を半分降りる』

「友人、家族、恋人など、どんな人とでも近づきすぎるとしんどくなるので、もっと距離を取ろう」ということが書かれた本。
鶴見さんと言えば『完全自殺マニュアル』などが有名で、過激な主張をする人というイメージがあるかもしれないけれど、実際に会って話すととてもおだやかな雰囲気な人だ。この本は鶴見さんの本の中で、一番鶴見さんの人柄がそのまま出ている感じで、とてもよかった。
最近は自分の人生の生きづらさについて書いた本がたくさん出るようになったけれど、鶴見さんが本を出し始めた90年代はそういう本が出る雰囲気ではなかった。心の病なども、みんなが共感できるものではなく、興味本位のキワモノコンテンツとして扱われていた。
そんな時代だったので、鶴見さんの初期の本には社会的な視点が多かったのだろう。そんな鶴見さんが、最新の本では今まで書いてこなかった自身の家族の話などを書いているのが、新鮮でよかった。

刊行記念で僕と対談した動画もあるのでそちらも合わせてよかったら。

www.youtube.com



小田嶋隆『諦念後 男の老後の大問題』

今年6月に65歳で亡くなってしまった小田嶋さんが、60歳以降の「定年後=諦念後」について書いたコラム集。
内容は蕎麦を打ってみたりジムに行ってみたり病気で入院したりと、「定年後の男たちはどう過ごすべきか」というテーマの話で、そんなにすごいことが書いてあるわけではないのだけど、小田嶋さんの文章はオダジマ節というか独特のグルーヴがあって、そのノリは健在で、楽しめた。文章による芸があった人だと思う。亡くなってしまったのが惜しい。


三宅香帆『それを読むたび思い出す』

書評家である三宅香帆さんの初エッセイ集。自伝的な内容で、誰かにその人の大事な思い出を聞かせてもらうのっていいな、という基本的なエッセイの良さを感じさせてくれて、とてもよかった。
「東京が全ての中心でそれ以外は辺境に過ぎない」みたいな思想への反発として、それぞれの地方にはそれぞれのよさがある、ということを語っている話がいい。著者と同じように地方で育った本好きの人たちへ向けてのメッセージなのだろう。京都の思い出や、ブックオフやイオンモールのよさについて書かれた文章が好き。


岸本千佳『もし京都が東京だったらマップ: くらべて楽しむ「街の見方」』

京都に行ったときに河原町の丸善で買った。もともとはウェブで話題になった記事で、それは前に見たことがあった。

withnews.jp

四条大宮は赤羽、烏丸は丸の内、叡電沿線は中央線沿線、とか京都と東京のいろんな街を例えていく本なんだけど、最後に「それでも鴨川だけは東京のどこにも例えられなかった」って書いてあるのがすごくよかった。
東京の街では、池袋はうまく例えられる街がなかったそうだ。確かに、あの池袋の都心だけどなんかごちゃごちゃした多国籍な感じがあって、活気だけはあるけどまとまりはない感じ、京都にはなさそう。


米本和広『我らの不快な隣人 統一教会から「救出」されたある女性信者の悲劇』

著者の米本和広さんは、安倍前首相を暗殺した山上容疑者が犯行前に手紙を送っていた人だ。統一教会を脱会させるために家族が信者を拉致監禁して、「逆洗脳」するというメソッドがあってそれを請け負う人たちもいるらしいのだけど、その拉致監禁でPTSDを発症し、統一教会も家族も両方信じられなくなって、居場所をなくしてしまった人の話がたくさん紹介されている本。
結構キツかった。統一教会にも賛同できないけど「家族の言うことを聞けないのは洗脳されてるからだ」と無理やり拉致監禁してくる家族にも反感を持ってしまう。統一教会も家族推しだし(だから合同結婚式とかさせるし)、家族という概念が一番悪いのではという気持ちになる。
そもそも、「あいつは洗脳されていて話が通じないから監禁して説得するしかない」となってしまうのは、もともと家族間でちゃんとお互いを自立した個人として尊重して話し合うことができていない関係性だったから、ということを思ってしまう内容だった。
「家族も友人も恋人もあまり深くつながりすぎないほうがいい」という鶴見済さんの『人間関係を半分降りる』を中和剤として一緒に読みたい。
米本さんの本は、僕の『人生の土台となる読書』でも少しだけ紹介したのだけど、ヤマギシズムについて追った『洗脳の楽園』、カルト信者の家庭に生まれた子どもを追った『カルトの子』など、どれも面白かった。


田近英一『凍った地球』

夏、すごく暑かったので涼しそうな本が読みたいと思って読んだ本。
ときどき現実逃避的に純粋な楽しみとして、自分の書く文章とは絶対に関係しなさそうな本を読みたくなって、そういうときはこういうサイエンスの本を読んでる。ブルーバックスとか。

この本はスノーボールアースについての本だ。スノーボールアースというのは、この地球は昔全部凍っていたことがある、という仮説だ。まだ仮説だけど、かなり信憑性のあるものと扱われているらしい。
地球は温暖な時期と氷河期を繰り返しているということはなんとなく知っていたけど、その理由をはっきり把握していなかったので、とても面白かった。数十万年とか数百万年単位の気温の上下には、プレートテクトニクスが関わっているのだ。
気温の上下は二酸化炭素による温室効果によって変わる。二酸化炭素は火山活動によって地面から放出されてもいるけど、岩石の酸化作用で気体から固体へと固定されてもいる。
そして、二酸化炭素が増えて気温が上がると岩石の酸化が進んで二酸化炭素を減らす現象が起こり、二酸化炭素が減って気温が下がると岩石の酸化が少なくなって二酸化炭素を増やす現象が起こる、という、自動調節機能が地球には実装されているところがすごく面白かった。これをウォーカーズフィードバックという。すごい絶妙なバランスだ。
(ちなみにこのフィードバックは数万年とか数十万年単位で効果が出るものなので、最近よく言われる人類のCO2放出による地球温暖化みたいな数十年とか数百年単位の話には効かない)
下の気候ジャンプの話も好き。




小説

佐藤究『テスカトリポカ』

アステカ文明で生贄の心臓を捧げてた話とメキシカンマフィアの残虐な抗争と麻薬マーケットや臓器売買マーケットの話が混ざりあって日本の川崎でぐちゃぐちゃになる話。暴力シーンがキツくて人が死にまくって面白くて、分厚い本だけど分厚さを感じさせない。神話的なもの(この場合はアステカ)を引いてくると物語に深みが出る感じがする。後半部分のカオスをもうちょっとじっくり見たかった気もした。


アンディ・ウィアー『プロジェクト・ヘイル・メアリー』

太陽エネルギーの減少という地球の危機に立ち向かう一人の科学者が主人公のSF。同じ作者の『火星の人』と一緒で、主人公以外の人間があまり出てこなくて、主人公もシンプルな性格なので、流し読みで読んでも筋がわかるし読んでて疲れない。
基本的に一本道の話を進んでいくだけなのであまり驚きはないのだけど、ハラハラしたりワクワクしたり泣きそうになったり、「この本を読んでいけば必ず一定の楽しさが与えられるだろう」という信頼をずっと持ち続けられる作風の小説。作者はウェブ小説出身らしく、確かに読みやすくてウェブ小説ぽくて、日本のなろう系とかとも通じるものがある気がする。


短歌

本を読めない時期も歌集だけは読めたので、今年は歌集ばかり読んでいました。今年の文学フリマで出した『ELITES vol.6 特集 短歌VS小説』という同人誌で、今年読んでよかった歌集として、平岡直子『みじかい髪も長い髪も炎』、伊舎堂仁『感電しかけた話』、雪舟えま『たんぽるぽる (短歌研究文庫)』、吉田恭大『光と私語』、橋爪志保『地上絵』の5冊を紹介したので、それ以外でよかったものを紹介しておきます。


舞城王太郎「短歌探偵タツヤキノシタ」

文学フリマで買ったナナロク社の『若い山賊(仮)』という冊子に収録されていた。ファウスト系+短歌というのがうちのエリーツの企画と丸かぶりだったのでこれが出ると知ったときはびっくりした。
内容は、木下龍也さんが短歌を一首作って、舞城さんがそれに合わせた小説を書くという形式。9歳くらいの少年、タツヤキノシタが主人公で探偵役。思った以上に短歌とがっぷり組み合った内容で面白かった。
驚いたのは、この短編を百本書くらしいということ。短編百本ってすごい。ショートショートとかじゃなくてそれなりの文字数のある短編だったので、百本は一冊に収まらないだろう。全10巻とかで出すつもりなのだろうか。すごいプロジェクトだ。
実際はどうかわからないけど、第一話を見ると、木下龍也さんが作った短歌がまず最初にあって、それを元にして舞城さんが話を考えたように見える、という作品だった。今後どんなふうに続いていくのか楽しみ。


瀬戸夏子『はつなつみずうみ分光器』

この20年の短歌シーンを瀬戸夏子さんが概説しながら歌集を紹介していく本。いろんな歌集の歌を解説付きで少しずつ読めてお得な一冊。僕の短歌知識はゼロ年代半ばの永井祐や斉藤斎藤あたりで止まってたので、これを読んで最近の歌集をたくさん知ることができた。
中立的な紹介ではなく、瀬戸さんの好みと独断をばんばん盛り込んでいく思い切った感じがよくて、切れ味のある文章がとにかく痛快。



ここから下は個別の歌集です。

五島諭『緑の祠』

緑の祠

緑の祠

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1月27日に安くてコンパクトな版が新しく出るみたい。

物干し竿長い長いと振りながら笑う すべてはいっときの恋
 
海に来れば海の向こうに恋人がいるようにみな海を見ている
 
歩道橋の上で西日を受けながら 自分yeah 自分yeah 自分yeah 自分yeah 


いろいろ歌集を読んだ中で、自分もこういう歌が作れたらいいのに、と一番憧れたのは『緑の祠』だった。激しい感情は少なくて淡々としているけれど、ロマンチスト的なところや言葉でちょっと遠い世界に飛躍しようとしているところがときどき見えるのが素敵。


鈴木ちはね『予言』

予言

予言

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スロープと階段があってスロープのほうを下ればよろこびがある
 
東京に住民票を置かないで住んでたころに見ていた川だ
 
マンホールの模様に地域性が出るみたいな話をしていたら 海


鈴木ちはねさんの短歌は、淡々と平凡なことを言っているだけのようで、なんかよくて、じっと何回も読んで反芻したくなる。すごくしっかりと周りを観察している人だと思う。ちはねさんの歌を読むことで、その冷静な観察の背後にある人格や人生に少しだけ触れることができた気がして、それがなんだか気持ちを揺さぶるのだと思う。


土岐友浩『Bootleg』

肝心なことはともかく夏草を見てきたことを話してほしい
 
夕食を終えてしばらくしたあとで普通の服で見に行く蛍
 
フルーツのタルトをちゃんと予約した夜にみぞれがもう一度降る


土岐さんの歌を読むと落ち着く。無理のない単語と文体でかっこつけない感じなんだけど、読むとなんだか良くて、何度も読み返したくなる。派手なことを何もやってないのに退屈しないのは何故なのか不思議。ずっと大事に持っていたい歌集だ。


枡野浩一『毎日のように手紙は来るけれどあなた以外の人からである 枡野浩一全短歌集』

さようなら さよなら さらば そうならば そうしなければならないならば
 
好きだった雨、雨だったあのころの日々、あのころの日々だった君
 
そのことを忘れるために今はただ小さいことにくよくよしたい


枡野浩一さんの今までの短歌のベスト版的な歌集。枡野さんの本は今まで短歌の表示のしかたにすごく凝っていた(横書きとか写真と一緒にとか)のだけど、今回の本では初めて普通の歌集みたいに、文字だけで一ページ一首を収める、という作りになっている。そうしたシンプルな作りが、歌の力をより引き立たせている。枡野さんの歌は、失われてしまったものやできなかったことに対する切なさを詠んだ歌が好きだ。



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2022年の面白かった本はこんな感じでした。いかがでしたでしょうか。
今年の終わりくらいから、ようやく歌集と漫画以外の本を読む気力が復活してきたので、来年はいろいろ読んで、また文章を書いていくつもりです。2023年もよろしくお願いいたします。