phaの日記

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面白かった本2018



今年読んで面白かった本をまとめてみます。今年はあまり文章を書かなかったから、読んだ本ちょっと少なめかも。大体なにか書くときに参考にしたり真似したりするために読むというのが多くて、本を読みたいから文章を書いてるようなところがある。


花田菜々子『出会い系サイトで70人と実際に会ってその人に合いそうな本をすすめまくった1年間のこと』

一体何だこのタイトルは、と思ってなんとなく手に取ってみたら、面白すぎて一気に読み終えてしまった。夫と別れて人生に迷っていた著者が自分の好きな本や読書を軸に世界を開いていく話。真剣な話なのだけど自分を無闇にさらけ出す感じではなく品位があって、その上で文章が愉快で思わず何回か声を出して笑ってしまった。本を好きで良かった、と思えるようになる本。

先崎学『うつ病九段』

うつ病九段 プロ棋士が将棋を失くした一年間 (文春e-book)

うつ病九段 プロ棋士が将棋を失くした一年間 (文春e-book)

先崎さんといえば将棋の棋士でありながらエッセイの名手としても知られ、飄々とした人柄で人気で、最近では『3月のライオン』の監修としても活躍しているのだけど、去年うつ病になっていたらしい。突然休場したのでどうしたのだろうと思っていた。
もともと文章の上手な先崎さんだけに、うつ病の描写がわかりやすく面白かった。あと、将棋の棋士だから、うつの酷さという計測しにくいものが棋力という計測しやすいもので測れるというあたりの話が面白い。昔なら1秒で解けてた七手詰めが10分かかっても解けなくなっていたとか、アマチュアの初段の人と平手で指していい勝負だったとか。今は回復したようでよかった。うつ病の人がうつの症状についてわかりやすく詳しく解説した読み物として良いと思う。

news.yahoo.co.jp

佐藤文香『そんなことよりキスだった』

そんなことよりキスだった

そんなことよりキスだった

俳人の佐藤文香による恋愛小説集。文章はあまり小説ぽくなくて、一つ一つの話は短くてすぐ読めたのが良かった。そんなにつらい話がなくて恋愛のワクワク感が溢れてる感じなのが良い。
僕はいわゆる小説っぽい小説にちょっと苦手意識があって、普段そんなに読まないし自分でもうまく書けない。その代わりエッセイとか短歌とかそういうスタンスのものなら読めるし書ける。そういう自分にちょうどいい読み物だった。こういう感じで軽く読めて文章も整っている読み心地の読み物って少ない気がする。
ウェブでいくつか読めるようです。

こだま『ここは、おしまいの地』

ここは、おしまいの地

ここは、おしまいの地

『夫のちんぽが入らない』が鮮烈だったこだまさんの二作目。病気になったりとかいろんな大変な目に遭った話が多いのだけど、読んでいるとついおかしくて笑ってしまう。理不尽な出来事に対して怒ったり悲しんだりするのではなく静かにユーモアに変換して語ってしまうやり方が悟りの境地のようというか唯一無二なスタンス。極限状態で最後まで生き残るのはユーモアや知性を失わない人だ、という『夜と霧』に書いてあった話を思い出した。

ECD『失点・イン・ザ・パーク』

失点イン・ザ・パーク

失点イン・ザ・パーク

今年亡くなってしまったECDの小説。僕はそんなにECDの音楽にも本にも触れてなくて、むしろ奥さんの植本一子さんの本から知ったくらいなのだけど。
私小説的な感じの話で、硬質な文体、アル中で入院、猫、彼女の話。東京の街の描写が良い。シンプルだけど自分の感じたものだけを書いた地に足がついた文章だという感じがして良い。
植本一子さんの本も結構読んでいるけど、夫婦それぞれが夫婦のことを書いてるのを部外者が読むのは結構変な気持ちになる。

漢 a.k.a GAMI『ヒップホップ・ドリーム』

ヒップホップ・ドリーム

ヒップホップ・ドリーム


内容が、俺はすごい、俺は本物、ワックな奴には負けねえ、カネも稼いでる、こういう地元で仲間たちとやってきた、みたいな感じで、ラッパーぽい内容だ、首尾一貫してる、と思った。そういう雰囲気の文章ってあまり普段読まないので新鮮。
文中で「ストリート・ビジネス」(観葉植物の販売とぼかして書いてるけれど要は大麻の販売)の話がしばしば出てきて、「ラッパーとして名が上がるとストリート・ビジネスのほうでも客が増えて信用されてどちらもうまくいった」みたいなことを書いてるのが面白かった。そういうものなのか。しかしやっぱり裏社会の人もビジネスの話を考えるの好きだなあという気持ちになる。自分は本当にそういうのが苦手なので。

瓜田純士『遺書』

遺書  -関東連合崩壊の真実と、ある兄弟の絆-

遺書 -関東連合崩壊の真実と、ある兄弟の絆-

なんとなく関東連合に興味を持って読んだ。中学生の頃から関東連合と密接に関係していた著者の話。面白かった。関東連合ってもともと杉並区とかの普通の暴走族だったんだな。それがなんか暴走族卒業してカタギにならずに、渋谷や六本木の裏社会へと繋がっていって一大勢力になり、しかしさまざまな事件を起こして破綻した、という話だったのか。
地元の人間関係が大人になっても継続している場合によくあるような、大人になっても学年が一つ違うことを気にするようなのが面白かった。僕が苦手な社会関係だ。反社の世界も結局社会か。関東連合の首謀者はまだ海外逃亡中なのか。

野崎まど作品

小説家の作り方 (メディアワークス文庫)

小説家の作り方 (メディアワークス文庫)

パーフェクトフレンド (メディアワークス文庫)

パーフェクトフレンド (メディアワークス文庫)

2 (メディアワークス文庫)

2 (メディアワークス文庫)

バビロン1 ―女― (講談社タイガ)

バビロン1 ―女― (講談社タイガ)


野崎まどは去年『[映] アムリタ』とか『野崎まど劇場』とか読んでそのままにしていたのだけど改めて読み始めた。
野崎まどは本当にうまいなあ。性格が悪くてひねくれていて頭の回転が一段上な感じがあって、それでいてラノベっぽいポップな文体とわかりやすいキャラの軽妙な会話で異常に読みやすくて、きちんと最後の方でびっくりさせてくれる。活字を読む気分にならないときでも読める読みやすさがある。
完璧な友達は、とか完璧な小説は、とか完璧な創作とは、とか毎回そういったテーマがあって良い。
未読の人はとりあえず『[映]アムリタ』が良いと思う。『2』はすごく面白いけど、それまでの5作品の登場人物が出て来るのでそれを全部読んでから読むのが良い。

[映]アムリタ (メディアワークス文庫 の 1-1)

[映]アムリタ (メディアワークス文庫 の 1-1)

平山夢明作品

独白するユニバーサル横メルカトル (光文社文庫)

独白するユニバーサル横メルカトル (光文社文庫)

ダイナー (ポプラ文庫)

ダイナー (ポプラ文庫)

異常快楽殺人 (角川ホラー文庫)

異常快楽殺人 (角川ホラー文庫)

著者の名前は知っていたけど今まで読んだことなかったのだけど、興味を持ったのは漫画化された『DINER』が面白かったので。
『独白するユニバーサル横メルカトル』は短編集なのだけど、どの作品も面白かった。暴力とグロと奇想が巧みな構成力と言語センスとサービス精神でまとめられている。グロいけど。『DINER』は漫画版とは微妙に話が違って両方読んでもそれぞれ楽しめる感じ。『異常快楽殺人』は実在するシリアルキラーの話。精神の調子が悪いときは陰惨なものが読みたくなるんだよな。

ユヴァル・ノヴァ・ハラリ『サピエンス全史』

サピエンス全史(上)文明の構造と人類の幸福

サピエンス全史(上)文明の構造と人類の幸福

サピエンス全史(下)文明の構造と人類の幸福

サピエンス全史(下)文明の構造と人類の幸福

2年前に流行った本だけどそういえば読んでなかったなと思い出して、今だったら図書館で借りられるかなと思って検索してみたら、まだ図書館では40人待ちくらいだったので買った。
今は人類といえばホモ・サピエンスだけだけど、そういうのはここ1万年くらいのホモサピ中心主義に過ぎず、昔はいろんな人類がいて殺し合ったり交じりあったりしていたとか、なんとなく知ってた話も多いけどシニカルで上手な例えがすごい多くて楽しい。

最近の健康と食生活への関心にひきつけて面白かったのは、狩猟採集民が農耕民より健康で豊かだったという話だ。人間の身体は狩猟採集生活に適応しているので(現在でもそう)(まだ農業が始まって一万年程度しか経ってないので遺伝子の進化が追いついていない)、木の実や肉など多様な種類のものを食べる狩猟採集民のほうが、小麦とかじゃがいもとか炭水化物ばかり大量に食べる農耕民より病気にならず、健康で寿命も長かったらしい。狩猟採集民のほうが一日の労働時間も短かったし(3時間くらい)、災害にも強かったし、戦争も起きにくかった。人間は農業を得ることで総生産エネルギーは上がって人口は増えたけれど、一部の富裕層を除く大多数の人間にとっては生活はより苦しく貧しくなったのだ。
狩猟採集生活が豊かで健康に良かったとかは意外。短命だと思ってた。ごはん=米を食わなきゃいけないと思ってしまいがちな日本人だったけど、別に炭水化物はなくてもいいのだ。糖質を控えよう、という、わりと普通の中年ぽい思いをより強くした。