びやぼん禁止令について何の根拠もないがこんなことを考えた。
ひょっとして江戸時代に取り締まられたのは、初期の歌舞伎が取り締まられた理由といっしょなのではないか。歌舞伎では男が女の人を演じる(女形)けど、そもそもの最初は女歌舞伎といって女の人が舞台に立ってた。それが禁止されたのは、その女歌舞伎が劇だけではなく春を売るようなこともしていたから。それで風紀を乱すということで女歌舞伎は禁止され、歌舞伎の舞台に立つのは男だけになったのだ。
びやぼんは、売春婦の持ち物だったのだ。吉原とかにいる幕府公認の公娼ではなく、町に立って勝手に営業してる私娼、夜鷹が客を引く合図としてびやぼんを鳴らしていたのだ。
このイメージの素になったのは昔聞いたベトナムのモン族の口琴の話だろう。モン族の口琴は日本でもよく売っていて安価で手に入るのだけど、この口琴は現地では夜這いの合図に使われるらしいのだ。つまり、男の人が夜中に女の人の家の前まで行って、びよんびよん、と鳴らすと、女の人は部屋の中から、びよんびよん、と応えて、部屋に招き入れるというような(そんな話だったと思う。結構記憶がおぼろげ)。
全く何の根拠もない妄想だけど俺の脳内では、日が暮れて人の顔も判別できなくなってきた江戸の町並み、碌でもない輩がうろつくうらぶれて殺伐とした辺り、の小さな路地の入り口、に立つやさぐれた女が鳴らす、けだるげに鳴らすびやぼんの間延びした哀しげな音、という風景が妙に強靭なリアリティを持ってしまって頭から離れなくてどうしようもないのでここに書いてしまうよ。
日本口琴協会は実はこの事実を知っているのだけど口琴をポピュラーな楽器にしようという運動の中で「口琴は昔は春を売る女の人が使っていた」という事実は都合が悪いので言わないようにしてるのだという陰謀説まで思いついてしまったよ(ごめんなさい)。
びょんびょん。