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phaの日記

毎日寝て暮らしたい

知識ゼロから将棋を楽しむための将棋ガイド(上)



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4月にコンピュータと人間が対決する第2回電王戦を見て将棋に興味を持って、そこから将棋にハマり始めました。この3ヶ月はひたすら将棋関係の本を読んだり指したり観戦したりばかりしていたので、読んだり見たり遊んだものの中で個人的に良いと思ったものを紹介してみます。


最初の入り口としては漫画やノンフィクションなどの読み物がいいと思うんですよね。将棋に限らず何かのジャンルのファンになるときって、まず誰か特定のプレイヤーに興味を持つとか、漫画や小説で読んで興味を持つとか、そういう「キャラ」とか「物語」とかから入るのが一つの入りやすい入り口だと思う(もう一つの入りやすい入り口は「知人や友人にやっている人がいる」かな)。

僕は大学時代は学生寮で麻雀ばっかりやってたんだけど、その麻雀が楽しかったのって、寮のみんなが「近代麻雀」っていう麻雀漫画しか載ってない漫画雑誌を読んでいて、みんなその近代麻雀的世界を共有していて、漫画の用語を使って爆牌だとか倍プッシュだとか亜空間殺法だとか言いながら遊んでるのが楽しかったんだよね。そういうフィクションやノンフィクションはゲームの文脈を豊かにしてくれる。

それと関連して、少し前にドミニオンというカードゲームとかポーカーをやってたときに思ったのが、別にそれらのゲーム自体が麻雀に面白さとして劣ってるわけじゃないけど、麻雀における麻雀漫画みたいな、読んで参考にしたりそのゲームの世界を広げたりしてくれる読み物があまりないのが少し淋しかったということだ。

そういう点では将棋は強い。将棋に関するフィクション、ノンフィクションはとても豊富にあるし、現在進行形でもたくさん書き続けられている。

ということでとりあえず漫画を紹介します。この3作品は僕が将棋に興味を持つ前から読んでたもので、3作品とも将棋が分かんなくても楽しく読めます。

柴田ヨクサルハチワンダイバー

ハチワンダイバー 1 (ヤングジャンプコミックス)

ハチワンダイバー 1 (ヤングジャンプコミックス)

ハチワンダイバー」とは「81マスに潜る者」という意味。プロ棋士になることに挫折した主人公が真剣師の世界で生きていく話。作中で対局シーンの割合が多いし、実際に使われている戦法とかもたくさん出てくるし、いろんな将棋漫画の中で一番将棋濃度が濃いんじゃないかと思う。

柴田ヨクサルの作風とか絵柄に好き嫌いはあるかもしれないが……(僕は好きです)。彼は前に「エアマスター」という格闘漫画を描いてた人だけど、「ハチワンダイバー」もかなり格闘漫画に近い(将棋が格闘に近いせいかもしれない)。要はバトルものですね。また、柴田ヨクサルは昔プロ棋士を目指していたこともあって実際の将棋も強く、渡辺明竜王に飛車落ちで勝ったこともあるらしい。現在もヤングジャンプで連載中。

羽海野チカ3月のライオン

3月のライオン (1) (ジェッツコミックス)

3月のライオン (1) (ジェッツコミックス)

以前には「ハチミツとクローバー」という美大青春漫画を描いてた羽海野チカさんの漫画。家族を事故で亡くして心に孤独を抱えた高校生プロ棋士の少年が下町(月島のあたりがモデル)で近所の美人三姉妹にやさしくされたり奔放な義姉に心を乱されたりする話。

漫画としてとても面白いし、作中で描写されるプロ棋士の世界も興味深いです。あと、「ハチクロ」みたいな若者たちの切ない話みたいなのも描かれてるんだけど、「3月のライオン」は30代のおっさん棋士とか60代の爺さん棋士とかの話がまたすごくいいんだよね……。作中でよく描写される月島のあたりの川の風景が印象的で行ってみたくもなります。現在もヤングアニマルで連載中。

能條純一月下の棋士

月下の棋士 (1) (ビッグコミックス)

月下の棋士 (1) (ビッグコミックス)

人間的にヤバい感じの棋士がいっぱい出てくる劇画調の漫画。将棋漫画というより能条漫画(「哭きの竜」など)という印象が強い……。すげー面白いんだけど。キャラの濃さでは一番です。この作品に出てくる髭で和服の刈田升三というキャラが好きで、そのモデルになった升田幸三のエッセイを読んだりした。全32巻完結。


他にも「ひらけ駒!」(南Q太)、「王狩」(青木幸子)、「しおんの王」(安藤慈朗、かとりまさる )などの将棋漫画もあるらしいけど読んでないので名前を紹介するだけにとどめます。あと、たまたまコミックビーム2013年7月号を読んだら「みるせん」(左藤真通)という将棋漫画が載ってて結構面白かった。将棋を指すよりも見るのが好きな将棋ファンの話。

大崎善生「将棋の子」「聖の青春」

将棋の子 (講談社文庫)

将棋の子 (講談社文庫)

聖の青春 (講談社文庫)

聖の青春 (講談社文庫)

棋士をテーマにしたノンフィクション二作。

「将棋の子」は、プロ棋士を目指したけれどプロになれずに挫折した棋士達のその後の人生を追った話。現在の日本では、プロ棋士になるには奨励会という組織に入らないといけない(新進棋士奨励会 - Wikipedia)。奨励会員は小学生くらいからひたすらプロを目指して戦い続けて、そのまま将棋一筋で高校や大学には行かない人も多い。しかし彼らに立ちはだかるのが年齢制限という規定だ。奨励会では「何歳までに何段に上がらないと退会」という規定が定められている。奨励会には小さい頃からひたすら将棋しか頭にない、人生に将棋しかないような人間がたくさんいるのだけど、その大半は20代半ばくらいでプロになれずに奨励会を退会させられてしまうという厳しい世界なのだ。そこで挫折した人たちがその後どう生きていったかという話はとても面白い。

「聖の青春」は、小さい頃から難病に侵されていたにも関わらず将棋に打ち込み、羽生と並んで「東の羽生、西の村山」と呼ばれトッププロとして戦いつつも、病気のため29歳で亡くなってしまった「関西の怪童」村山聖九段の話。これもすごく面白かった。ちなみに村山は「3月のライオン」の二海堂のモデルでもあるようだ。

団鬼六真剣師小池重明

真剣師小池重明 (幻冬舎アウトロー文庫)

真剣師小池重明 (幻冬舎アウトロー文庫)

「花と蛇」などSM小説の第一人者として有名な団鬼六は将棋にも造詣が深く、将棋雑誌の発行人を務めていたこともある。その団鬼六が個人的にも親交が深かった真剣師小池重明について書いた本。

真剣師というのはプロとは違って、街で現金を賭けて将棋を指す将棋指しのこと。今ではもういないみたいだけど、40年くらい前までは街の将棋道場とかにいたらしい。小池重明は「新宿の殺し屋」と呼ばれ将棋は鬼のように強かったが、酒を呑んだくれるとか金を横領するとか女性問題を起こすとか素行に問題があり、一時はプロへの編入の話もあったが素行の悪さもあって結局叶わず、44歳で肝硬変で死んでしまったのだけど、その破滅的な生き様がとても面白い。


「将棋の子」「真剣師小池重明」なんかを読むと昔は棋士というもののイメージが今と少し違っていたんだなと気づく。今は棋士って「理系で頭がよくて勉強が得意そう」みたいな印象があるけど、なんか昔の棋士はもっと破天荒というか無頼というか、もし将棋がなかったら社会不適合者になっていたに違いないみたいな人が結構いたようだ。

それが羽生善治を代表とする羽生世代(1970年生まれ前後)の活躍あたりをきっかけにしてイメージの変化があったらしい。その世代あたりから、将棋にデータベースやコンピュータを駆使した研究が必須になってきたという事情もあるようだ。

宮内悠介「盤上の夜」

最後にちょっと毛色の違うものを紹介しておきます。

盤上の夜 (創元日本SF叢書)

盤上の夜 (創元日本SF叢書)

盤上の夜 (創元日本SF叢書)

盤上の夜 (創元日本SF叢書)

6つの短編が収められたSF短篇集。著者のデビュー作にして第33回日本SF大賞受賞、第147回直木賞候補作ということで去年話題になった本です。

それぞれの短編では囲碁、チェッカー、麻雀、チャトランガ(古代チェス)、将棋というボードゲームが扱われているんですが、どの作品も「ゲームと知性と超越的感覚」「人間と神」みたいなテーマがふんだんに盛り込まれていて読みごたえがあります。著者は将棋はそれほど詳しくないらしく、囲碁、麻雀に比べて将棋成分はあまり高くないですが。僕は囲碁は全然分かんないんだけどこれ読んだら囲碁も面白そうだと思った。Kindle版が単行本の半額以下と安いので手に入れやすいです。


次の記事ではオンライン対戦、入門書、プロ棋士の対局の観戦、コンピュータ将棋の現状、将棋関係アプリ、変な棋士などについて書こうと思います。
書きました→知識ゼロから将棋を楽しむための将棋ガイド(下)

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