phaの日記

パーティーは終わった

インターネットの恵みで生きる(前編)



実はひとりになりたいゆえに
バカみたいにたくさんの人と話すのだ

早川義夫「ラヴ・ゼネレーション」より

ネットがなかったら僕の人生はもっと寂しくてみじめでつまらないものだっただろうと思う。今の僕の生活は収入も人間関係も暇潰しの娯楽も全てネット経由で得たものばかりだし、もしネットがなかったら、僕は今でも大阪で嫌々とやる気のない会社員でもやっているか、完全な無収入になって頼る人もいずに世界のどこかで野垂れ死んでいただろう。
小さい頃からずっと学校や会社が苦痛で「だるい」「行きたくない」「毎日好きなだけ寝ていたい」「人と話したくない」「一日中ひとりで勝手に行動していたい」と思っていた。けれど、どうしたらそんな風に生きていけるのか全く分からなくて、28歳までは苦痛をこらえながら学校に通ったり会社に通ったりしていた。しかし、2007年にプログラミングやTwitterを始めて、ネットにディープに関わるようになって、道が開けたように思えた。

「ネットさえあれば定職につかずにフラフラしててもなんとか生きていけるんじゃないか?」

そう思って僕は仕事をやめ、その後4年間浮き草のような生活を送っているが、まだなんとか死なずに生きてこれている。そういった僕の経験や考えたことについて、誰かの役に立つのではないかと思うので、ちょっと紹介してみたい。

最初に言っておきたいのは、それは「何もしなくても不労所得で寝ててもお金がどんどん入ってくる」みたいな美味しい話ではない(僕もそういう境遇になりたいけどなかなか難しい(つーかなんかうまい話ないっすかね(ほんとに)))。わりと手間はかかるし、大して儲かるわけでもない。お金がないなりにそれなりに楽しくやっているけれど、僕の年収はここ数年ずっと100万未満だ。さらに、そういう生き方にも適性や能力はやっぱり必要で、誰にでも真似できるものではない。多くの人にとっては普通に会社に勤めているほうが楽かもしれない。でも、僕と同じようなある種の、この社会での生きづらさを抱えているような人には一つの生きるヒントになるんじゃないかと思うので書いてみます。

サイト作り編

僕が会社や学校が嫌だった理由は、

  • 毎日決まった時間に起きなければいけない。睡眠時間が足りない。通勤とか通学だるい。
  • 毎日長時間、週に5日も肉体を拘束される。だるすぎる。家で寝てたい。
  • 毎日長時間、他人と一緒にいなければならない。別に仲良くもない他人と挨拶したり話すのがだるい。
  • というかそもそも仕事なんかしたくないしずっと寝転んで漫画とか読んでたい。なんで仕事とかしなくちゃいけないのだるい。
  • とにかくだるい。

といった感じだった。

毎日好きなだけ寝ていたいし、天気がいい日は仕事なんてせずに散歩でもしたいし、雨の日は外に出ずに家で本でも読んでいたい。けれど会社や学校があるとそんな風に自由に行動することができないのが不満だった。人と話すのも面倒臭い。コミュニケーションなんてチャットでいい。

一人で好きなように時間が使えて、自由に気の向くままにいろんな場所に出かけることができて、それでも生計が成り立つような方法はないだろうか。小さい頃からずっとそんなことを考えていたけれど、いい案は思い浮かばず、だるいだるいと思いながらずっと会社や学校に通っていた。だるいけど他に選択肢が思いつかなかった。そんなときにインターネットに出会ったのだ。これうまいこと使ったらなんとか食うていけへんやろか、と僕は思った。

まずHTMLやCSSを覚えて、とりあえずいろんなサイトやブログ(自分の興味のある分野のまとめサイトなど)を作ったりしてみた。だけど大した収入にはならず、広告を貼っても月1000円くらいの収入にしかならなかった。そうしていろいろ作ってるうちに、一ページずつ手作業で作っていくのが面倒臭くなって、「プログラミングを覚えたら自動的にページを大量に作れて何もせずにたくさん収入が入ってくるんじゃないか」と思い、PHPを勉強し始めた。勉強方法はサイトや入門書を使って独学した。

PHPを勉強し始めてから1ヶ月くらいで、最初に作って公開したのが村上春樹風に語るスレジェネレーターというページだった。これはプログラミング的にはごくごく初歩的な技術しか使ってないのだけど、結構人気になってたくさんの人が見てくれた。それほど収入にはならなかったが、自分の作ったものがいろんな人に面白がってもらえるという楽しさを知った。僕は調子づいて、圧縮新聞二つ名メーカーホッテントリメーカーなど、そのあとしばらくウェブサービスをたくさん作り続けた(作ったものの一覧は http://pha22.net/ に大体載ってます)。サイト作りは向いていたのか楽しく続けられた。

プログラミングを始めて数カ月後くらいの時点で、サイトに貼った広告からの収入は月2万くらいにはなっていただろうか。食べていくには全然足りない額だけど、この調子でいろいろ作っていればそのうち食うくらいはなんとかなるんじゃないかという気がした。仕事で貯めた貯金もある程度あったのでしばらくは生きていけるし、まあなんとかなるだろう、と思い僕は無職になった。

せどり編

次に始めたのは「せどり」だった。「せどり」という言葉は「本の背を取る」という意味の「背取り」から来ているとも言われ、もともと古本をどこかで買ってきて転売して利益を出すことを意味するが、最近ではブックオフなどで安い本を仕入れてネットのオークションで売るという行為を指すことが多い。最近のせどりは扱うものも本に限らずCD、DVD、ゲーム、フィギュア、パソコン、服など、ネットで売れるものなら何でもありな感じになっている。

仕事を辞めてからはかねてから望んだ通りに好きな時間に寝て好きな時間に起きて、気が向いたときにサイトを作ったりするくらいで他には何もしないだらだらとした生活をしていたのだけど、暇なので毎日のようにブックオフに通っていた。ブックオフに行くというのは無職の重要な日課の一つだ。ブックオフに行くとタダで漫画が立ち読みし放題だし、105円の棚を探せば面白い本も結構売っている。都会で無料で時間を潰せるところってブックオフか図書館くらいじゃないだろうか。

そんな風に毎日ブックオフに通ってるうちに、自分の好きなジャンルの本で結構レアな本が安く売ってるのを見つけることがときどきあった。その本の値段をネットで調べてみると案の定プレミアが付いていて、ブックオフで売っている値段の5倍くらいになっている。そういったことをきっかけにして、そういうレア本をブックオフに通いがてらに仕入れてきて、ヤフオクやAmazonで売るということをするようになった。

ホリエモンが起業したい若者にせどりを進めたりしているようだけど、せどりはビジネスとしては、元手も大して要らないし、一日に少しの時間でも空いた時間を使ってできるので、手軽に始められる。ただ大規模にやろうとすると、近所のブックオフだけでは仕入れが足りず遠くのブックオフにも行かないといけないし、プレミアがついている本をこまめに検索してリストを作ったりする手間もかかるので、結構面倒臭い。大量の在庫を保管する場所も必要になる。

僕はそもそもあんまり働きたくないので片手間にやっていたんだけど、一番やっていた頃は平均すると一日1時間ちょっとの仕事量で月に4~5万くらいの収入にはなっていただろうか。時間の自由が効くし、人に会う必要がなく自宅で作業できるのがよかった。ブックオフに行くのはいつでも気が向いたときだけでいいし、どっちみち日課としてブックオフには行くのだ。ネットに出品する作業や発送する作業はちょっと面倒だけど、そんなにたくさん働くわけでないし、家でパソコン相手にする作業ならそれほど苦痛じゃなかった。

インターネットは「新しい自然」のようだった

「サイト作り」にしろ「せどり」にせよ僕が続けられたのは、

  • 時間を自分の自由に使える
  • 人と会わなくていい

という点を満たしていたからだと思う。特に「人と会わなくていい」のは重要だ。人と話したり挨拶したり質問したり交渉したり喧嘩したりするのが本当に嫌なのだ(たまにならいいんだけど)。もちろん、サイト作りにせよせどりにせよ、ネットを介した向こう側にはちゃんと人間がいる。実際の人がいて、その人がサイトを見に来てくれたり本を注文してくれることで、それが収入になっている。その点では普通の商売と全く変りない。しかし、相手の人と直接コミュニケーションすることがないため、人間をほとんど意識しないんだよね。

感覚としては、人を相手に商売をしているのではなく、山に入っていって栗でも拾ってきているような感じだった。サイトを作って広告を貼ったら毎日ちょっとずつお金が入ってくるのは、川に罠をしかけて放置して、一日一回見に行くと魚が何匹か入ってるようなのと同じ気分だった。風向きや天気からその日の収穫を予想するような気分で、アクセス解析や広告の売上レポートをチェックしたりもしていた。

実際はネットは人間の活動の集合体なんだけど、僕にとってはもうネット自体が人間から独立した一つの新しい自然として存在しているように思えた。その新しい自然の生態系はとても複雑で豊かで、いろんなもの(植物や動物や虫など)が活発に活動して絡み合っていて、その中をこまめに見て回れば何とか自分が食べる分くらいは拾ってこれるのだ。そうやって直接人とコミュニケーションしなくてもお金を手に入れることができる、というのは僕にとってとても救いだった。

ここでは僕が知っている分野として「サイト作り」と「せどり」の2つを取り上げたけれど、それ以外にもネット経由でお金を稼げる方法はたくさんあると思うので興味のある人はいろいろ探してみるといいと思う(なんかいい話があったら教えてください)。人や物がたくさん集まる場所にはいろんな食い扶持が落ちているものだ。そしてインターネットは部屋にいながら人や物がたくさん集まる場所にアクセスできる、人類初めてのツールなのだ。


とりあえずここまで。「インターネットの恵みで生きる(後編)」では、ネット経由で面識のない人からいろんな物を貰った話などを書こうと思います。

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