phaの日記

パーティーは終わった

最近読んだ本



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小笠原諸島父島22泊25日途中船がないから帰れないという島流しツアー(1/11〜2/4)も最初のうちは部屋でごろごろしたり海辺をぶらぶらしてるだけで満足だったのだけど大体2週間くらいしたところから「あー帰りたいなー、漫画読みたいなー、友達の顔見たいなー」という気持ちが出てきたりしていて、でもまあ船がなくて2月4日までは帰りようがないので島で読んだ本の感想でも書いてみます。

「拝金」

拝金

拝金


ホリエモンの初小説らしい。面白かった。フィクションなんだけどホリエモンのリアルな人生の内容をかなり忠実になぞった内容になっているのでライブドア事件に対するゴシップ的な興味で読んでも面白いし、ホリエモンが語る「金を腐るほど持ったらこんな景色が開けてるんだぜ!」っていう世界の開示にも引きこまれた。今まで起業とかする人はなんでそんな面倒臭いことをするんだろうとかよく分からなかったんだけど、みんなこういう世界を目指してたんですね、とちょっと分かった気がした。小説としてもシンプルだけど面白いんじゃないでしょうか。
ホリエモンが飛び抜けていると思うのは「成功する」という目標だけに向かって全力を傾けられるところで、社会的な一般常識を守るとか自分のやりたいことを探すとかそんなのどうでもいい、のんびりする時間なんて要らない、仲間や友達や家族も邪魔になったら切り捨ててきた、でかい仕事をやって社会的に成功すること以外興味ない、って言ってしまえるところだと思う。明快だなー、凄いなー、とか思ってつい勢いでホリエモンの有料メルマガ購読したりiPhoneアプリの「君がオヤジになる前に」を購入したりしてしまった……。孤島にいるとお金使わないだろうと思ったけどネットがあるとネットで買い物が普通にできちゃうのでいけませんね。
あ、あとこれはAmazonのほしい物リストから送ってもらった本なので、送ってくださった方、どなたか知りませんがありがとうございました。楽しめました。

「高い城の男」

高い城の男 (ハヤカワ文庫 SF 568)

高い城の男 (ハヤカワ文庫 SF 568)

ディックは昔に「暗闇のスキャナー」とか「パーマー・エルドリッチの三つの聖痕」とかいくつか読んでたけどこれは読んでなかったので久しぶりに買ってみた。第二次世界大戦で日本とドイツが勝って分割占領されたアメリカの話。舞台はアメリカなんだけど戦勝国の日本の影響で易経とか道(タオ)とかの思想が人々に大きな影響を及ぼす世界になっている。単に第二次大戦前後の歴史改変ものとしてだけなら佐藤大輔とか読んだほうがリアリティがあって出来がいいと思うけど(初めての人には「征途(全3巻)」がお薦め)、ディックはタオとか易とかなんかそういう超越的な観念のもとで人が右往左往する様子とかオカルトっぽくハッタリ効かせた目眩がするような意識の流れの描写とかが凄くいいですね。

「空からぎろちん」

空からぎろちん (講談社文庫 な 41-16)

空からぎろちん (講談社文庫 な 41-16)

中島らものエッセイ集。十年以上前に読んだものの再読でブックオフの100円棚にあったのを拾ってきた。僕が10代の頃に好きだった物書きを3人挙げるとしたら、中島らも筒井康隆橋本治って感じなんだけど、今から振り返って僕は中島らものどういうところが好きだったんだろうって考えながら読んだら、「一般的な社会から外れたダメなものへのシンパシーとか、世界にあるいろんなダメなものを紹介してくれるところ」というところかなーと思った(ちなみに筒井康隆からは「スラップスティックな奇想」を、橋本治からは「別に難解な用語とか外国の学者とかの名前を出さなくても平易な言葉だけで社会とか人間とかややこしいことについて面倒臭く考えてもいいんだ」ということを学んだと思う)。

「究極の身体」

究極の身体 (講談社プラスアルファ文庫)

究極の身体 (講談社プラスアルファ文庫)

昔ハードカバーで読んだんだけど文庫化されてたのでまた買ってみた。20代の半ばくらいに身体論的なものに興味があってヨガ教室に行ったり合気道の道場に通ったりコンテンポラリーダンスのワークショップに行ったりしてた時期があって、その頃に読んだ本。
「人間は自分の身体を意外と正確に把握していない」という事実があって、例えば「腕の骨は直接肋骨に接続されていない(鎖骨を経由している)」とか「肘と手首の間や膝と足首の間には二本の骨があるけどわりとみんな一本だと認識している」ということを見落としがちだ。体を使う上で複雑な構造を単純なものだと誤認しているとその複雑性を使いこなせないし、意識が動きに与えるパフォーマンスは重要、トップアスリートは背骨の骨の一個一個を個別に認識していたりする、とかそんな話が満載の本。僕は普段から肩こりとか酷いんだけど、読んだら読んだだけで体がちょっと楽になった感じがした。

昔読んだ身体意識に関する本では他には「身体感覚を取り戻す―腰・ハラ文化の再生 (NHKブックス)」とか「サーノ博士のヒーリング・バックペイン―腰痛・肩こりの原因と治療」とかがよかったです。

「地獄の季節」

地獄の季節 (岩波文庫)

地獄の季節 (岩波文庫)

海に行く、というので何となく連想して持ってきたのは有名な次のフレーズのせいだけど、

また見つかった、
ーー何が、ーー永遠が、
海と溶け合う太陽が。

こんな古典的なものに今更何か感想を言うのもあれだけど、硬質な言葉で豪速球でやさぐれてるのが爽快ですね。最近の自暴自棄な気分で強い酒をあおりながら「地獄の季節」を読むという中二病なことをしてたらとても気持ち良かった。

役は終わった、俺はヨーロッパを去る。海風は俺の肺臓を焼くだろう。未開地の天候は俺の肉を鞣すだろう。泳いでは草を敷き、狩しては煙草をふかし、滾り立つ金属のような火酒をのむ事だ。ーー焚火を囲んで、あの親しい祖先の人々がしたように。

俺は旅をして、この脳髄の上に集まり寄った様々な呪縛を、払ってしまわねばならなかった。俺は海を愛した。この身の穢れを洗ってくれるものがあったなら、海だったに相違ない。俺は海上に慰安の十字架の昇るのを見た。俺は虹の橋に呪われていたのだ。

あとは三島由紀夫豊饒の海」全四巻とグレッグ・イーガンディアスポラ」をちょびちょび読み進めてるんだけど2月4日までに全部読めるか微妙。