ゲーセンで、パチスロを打っていた。何故パチンコ屋じゃなくてゲーセンで打っているんだろう、と疑問に思っていた。これじゃあ勝ってもおカネに換金できないじゃないか。
空港のロビーみたいなゲーセンだった。やたらと広くて床のタイルはつるつるで、一階と二階を結ぶエスカレーターの周りは広い吹き抜けになっていて、壁は、10メートルくらいの高さがある丈夫そうなガラスだった。その向こうには滑走路とか飛行機の発着とかが見えそうなくらいのガラスだった。
でも外は見なかったので、ガラスの向こうに何があったのかはわからない。
僕は良いスロットの台を探していた。台と台のあいだを歩き回っていた。
一階にも二階にも、ものすごくたくさんのスロットの台があった。でも、パチンコ屋ではなくてゲーセンなので、旧式の台しかなかった。旧式の台は打ち方がわからない。打つものがない。
そういえば明日は東京に行く予定だった気がする。でも、何も用意をしていない。チケットもとっていない。
とりあえずお金をメダルに両替することにした。五千円札をメダル貸出機に入れた。すると、百円玉が五百枚くらい出てきた。
これは、おい、多すぎるだろう。壊れてるんじゃ、ないのか。それが大儲けだとは思いつかなかった。そもそも百円玉はスロットの機械に入らないということを心配していた。どういうシステムになっているんだろう、ここの店は。
と思っていると、いつの間にか百円玉は、節分に使うような、炒った大豆になっていた。だけどその豆は、朽ち果てたような灰色をしていた。やたらともろくて、手でさわるとすぐに崩れて粉状になった。
困った。その灰色の豆には結構な価値があるのだ。それは知っているのだけど、崩れて粉になってしまうのは困る。
体格のいいおばさんが三人、僕を囲んでいた。
僕がメダル貸出機をいつまでも使っているから、順番待ちをしているのだ。
とりあえずこの豆をどけて貸出機を空けなければ。払出口にたまった灰色の豆を自分の箱に移そうとした。両手で豆をすくって箱に入れた。手が灰色の粉にまみれていく。
目分量では、両手で豆をすくって自分の箱に移す作業を五回くらいやれば全部移し終わるだろう、と思っていたのだが、その作業を五回やってもまだ豆は払出口に残っていた。五回移し終わったところで、あと三回で終わりそうだ、と思ったのだけど、あと三回やっても終わらなかった。払出口にたまった豆は少しずつ減ってはいるのだけど、いつまでたっても全部なくなることはなかった。
僕の手も服も、灰色の粉だらけになってしまった。三人のおばさんはずっと僕を囲んでいた。